FPいわかみ
お役立ちコラム
「外貨預金」とは名ばかり。
実はFX投機では?
先日、とある銀行の支店で「期間限定の金利上乗せ」という表示に魅かれて、外貨預金のパンフレットを貰ってきました。
【米国ドル外貨定期預金】
販売期間限定:対象期間 2019年1月XX日~2019年3月XX日
手数料優遇:特別金利+為替手数料優遇(円貨から預け入れの場合)
期間:2カ月
預入額:3万米ドル以上
特別金利:5.5%(税引前)
為替手数料優遇(預入時):1米ドル当り0.5円(通常は1円)
為替手数料(満期時):通常手数料 1米ドル当り1円
期間限定、特別金利、為替手数料優遇、と魅力的な単語が並んでいます。円の定期預金の金利ほぼ0(ゼロ)が長く続いているので、2カ月・5.5%、というのも気になりますね。
でも、本当に魅力あるでしょうか?
この預金ですが、銀行にとってのポイントは2つあります。
①2カ月という短期間
②預入時0.5円+円に戻す時1円の為替手数料
皆さんは普段は円を持っているので、外貨預金するときは、預入時に「円貨➡米ドル」、外貨定期預金の期日に円貨に戻す際に「米ドル➡円貨」という為替取引が必ず発生します。
為替取引があると、銀行は「為替手数料」を取りますので、この外貨定期預金では2カ月という短期間に銀行は2回の為替手数料を取れることになります。
これがこの商品の(銀行にとっての)最大のポイントです。
具体的に確認してみましょう。
まず、2カ月分の利息を計算してみます。
20.315%の税金が引かれますので、2カ月分(60日とします)の手取り利息は30,000ドルx5.5%x60/365日x79.685%=216.13ドル
次に、為替手数料を計算してみましょう。満期時には円貨に戻すとします。
預入時:1ドルあたり0.5円なので30,000ドルx0.5円=15,000円
満期時:1ドルあたり1円なので30,000ドルx1円=30,000円
合計=45,000円
ここで、おわかりと思います。
1米ドル=110円とすると、利息手取り額23,700円(216.13ドルx110円)を貰う代わりに、45,000円の手数料を払っているのです。
差し引き21,300円のマイナスからスタートです。
もちろん、必ずマイナスになるということではありません。
満期時の為替レートによって、円貨ベースでの損益が変化します。
例えば、満期時の為替レート:
①預入時より約0.21円ドル高:円貨ベースの損益ゼロ
②預入時より約1.00円ドル高:円貨ベースで約5.5%の利回りを確保
満期時の為替レートが預入時よりドル高になればなるほど、利益が増えます。
ちょっと、待って!
ということは、為替取引をやっているのと同じ?
その通りです。
名前は「外貨定期預金」となっていますが、実際は「216ドルあげますので、3万ドル買って、2カ月の間にドルが高くなる方に賭けませんか?ただし、為替手数料はかかります」です。
為替取引ですが、米ドルであれば為替手数料がほぼゼロで出来る金融機関もあります。わざわざ、0.5円や1円の手数料を払いますか?
2カ月という短期間で、ドルの上げ下げを予想するというのは、「投資」というよりは「投機」といえるのではないでしょうか。
もちろん、ドル高に自信がある方であれば、悪くない商品かもしれません。
「投資はあくまでも自己責任で」ですが、外貨がからんだ商品の検討の際の参考になれば幸いです。